「島津さんはよく
『メンバーそれぞれの強みを
発揮できるようにすればいいんだよ』
って言いますが、人事権のない私は、
今の業務に適性がない、
と思ったメンバーを
なかなか異動させることもできないため、
どうしても理想論に聞こえてしまいます」
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先日主催したセミナーの場で
視聴者の方から、こんな訴え?相談?を受けました。
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確かに私の話はかつて人事部長だった時の話や
社長だった頃の話が多いので
適性が合わないメンバーを
“より適性のあった職場”
へ配置換えすることで、強みを発揮してもらう、
発揮し続けてもらう、という
『権限をもったからこそできる方法論』
に聞こえたかもしれません。
いわゆる
「適材適所の追求」
というやつですね。
それでは自分が店長や所長、チームリーダーなど
配置換えまでの人事権がなかった場合、
どうしたらいいのでしょうか?
島津がかつて一店長だった時の話を、
ちょっとだけご紹介しますね。
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私が店長をしていた頃、
ある二人の営業マンがいました。
一人はとても戦略的な思考をもって
「合理的・効率的に仕事を進めていくタイプ」
です。
仮にA君とします。
もう一人は、戦略的に考えるのが苦手で
結果がなかなか出せないのですが、
「とにかく行動、運動量が豊富なタイプ」です。
こちらは仮にB君としましょう。
それぞれ業績目標や
プロセス目標(訪問件数など)は同じです。
私は合理的・効率的に仕事を進めていく
A君に対しては
「プロセス目標は無視していいよ。
やり方はA君に任せるよ。
そのかわり結果に関しては
全社でトップを目指そうよ」
と伝えました。
一方、なかなか結果が出ないけど、
行動量の豊富なB君に対しては
「とにかく
プロセス(訪問件数や商談件数)に関しては
誰にも負けないように、
全社でトップを目指そうよ。
結果は後からついて来るから」
と伝えました。
この世には、同じ人間は誰一人として
存在しないわけで
みな、
「それぞれの特徴、強み」
というものがあります。
生身の人間ですから、
みんなを機械のように同じモノサシで測り、
マネジメントしようと思っても、
そもそもうまく行きっこないのです。
そこで私はA君、B君のそれぞれの「強み」を
日頃からよく「観察」して
同じ営業という仕事でも
違う「やり方」を指示、
アドバイスしたわけです。
その結果・・・
A君は期待通り、全社でトップの業績を挙げました。
なかなか成果が出せていなかったB君も、
プロセス、行動量で群を抜き、
業績(結果)の方も全社で上位30%くらいに
食い込むことができました。
マネジメントの立場にいると、
ついつい結果をメンバー(適性)の
せいにしてしまいがちですが
このように、それぞれの強みに合わせた
「やり方」に変えるだけで、
メンバー一人一人が輝き始める
ということをこれまでたくさん見てきました。
禅の言葉に
「全機現(ぜんきげん)」
という言葉があります。
「人がもっている全ての機能を現す」
という意味です。
チームの状態に例えるなら
メンバーがもつ、それぞれの強みを、
メンバー全員が発揮している状態になります。
今のあなたに、たとえ人事権がなかったとしても
日頃から、メンバー一人一人の強みを
よく「観察」してみてください。
その強みに合ったやり方に変えるだけで
成果を発揮できていないメンバーも
光を放ち始めるかもしれません。
誰にでも必ず強みはあるのですから。
ぜひ今日からまた、
メンバーの強みを再発見するために
「観察」から始めてみてください。
禅メソッドアカデミー学長 島津清彦